シンガポール旅行の予防接種|薬剤師が詳しく解説

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シンガポール渡航前の予防接種完全ガイド:必須・推奨ワクチンと接種スケジュール

シンガポールは赤道付近に位置する熱帯国家で、年間通じて高温多湿の気候が特徴です。渡航期間が長期になるほど、また現地での活動範囲が広がるほど、感染症の予防接種の重要性が高まります。本記事では、薬剤師の視点から、シンガポール渡航者が渡航前に検討すべき予防接種について、最新の情報に基づいて解説します。


シンガポール渡航時に必要な予防接種

法的に必須な予防接種

シンガポールへの入国に法律上の義務付けられた予防接種は現在ありません(2026年時点)。ただし、黄熱病流行国からの入国者に対しては黄熱病予防接種証明書の提示を求める場合があります。

薬剤師メモ
かつて黄熱病の予防接種が推奨されていた時期もありますが、シンガポール自体は黄熱病の常在地ではなく、現在はアフリカやラテンアメリカ経由での入国者のみが対象となることがほとんどです。最新情報は在シンガポール日本国大使館で確認してください。


強く推奨される予防接種(渡航者向け)

シンガポール渡航前に接種が強く推奨されるワクチンを、以下の表にまとめました。

ワクチン名 対象者 接種回数 接種間隔 効力持続期間
A型肝炎 全渡航者 2回 6〜12ヶ月 20年以上
B型肝炎 全渡航者 3回 0・1・6ヶ月 終生免疫
腸チフス 長期滞在者・衛生リスク高い活動予定者 1回 3年
日本脳炎 郊外・農村地域への滞在予定者 2〜3回 疫学状況で判断 数年〜10年
MMR(麻しん・風疹・おたふくかぜ) 1966年以降生まれで接種歴不明者 2回 28日以上 終生免疫
水痘(みずぼうそう) 既感染なし・接種歴不明者 2回 4〜8週間 終生免疫

A型肝炎ワクチン

最も重要な接種の一つです。シンガポールは一般的に衛生状態が良好ですが、渡航者による感染報告例が存在します。

使用ワクチン

  • ハヴリックス®(グラクソ・スミスクライン製): 不活化ワクチン、1回目から6ヶ月後に2回目
  • エイムワン®(MSD製): 不活化ワクチン、同様のスケジュール

接種スケジュール例

  • 渡航予定日が2ヶ月以上先:通常の6ヶ月間隔で接種
  • 渡航予定日が2ヶ月未満:急速スケジュール可能(医師に相談)

費用目安

  • 1回あたり:6,000〜8,000円
  • 2回接種:12,000〜16,000円

薬剤師メモ
A型肝炎ワクチンは不活化ワクチンのため、妊婦でも安全ですが、妊娠中の新規接種は一般的に出産後に延期されます。授乳中の接種は問題ありません。


B型肝炎ワクチン

シンガポールはB型肝炎のキャリア率が中程度の地域です。医療機関の受診や歯科治療の受け口の可能性を考慮して、接種が推奨されます。

使用ワクチン

  • ビムスターバックス®(MSD製): 組換え型B型肝炎ワクチン
  • セロバック®(グラクソ・スミスクライン製): 同上
  • ダブルシリックス®: A型肝炎とB型肝炎の混合ワクチン(効率的)

標準接種スケジュール

  • 0ヶ月目、1ヶ月目、6ヶ月目に各1回接種
  • 加速スケジュール(0・7日目・21日目+1年後1回)も選択可能

費用目安

  • 1回あたり:4,000〜6,000円
  • 3回接種:12,000〜18,000円

腸チフスワクチン

長期滞在者・露店での食事が多い予定者に強く推奨されます。シンガポール全体での発生率は低いですが、東南アジア地域全般への渡航と組み合わせる場合は検討してください。

使用ワクチン

  • ビプラスムV®(鳥居薬品製、サノフィ): 有莢型多糖体ワクチン(筋注)
  • ティフィム Vi®(サノフィ製): 同上

接種スケジュール

  • 単回接種で3年間の効力
  • 追加接種は3年ごと

費用目安

  • 1回:3,000〜5,000円
  • 3年ごとの追加:同上

薬剤師メモ
腸チフスワクチンには経口生ワクチン(Ty21a)と筋注不活化ワクチン(Vi多糖体)の2種類があります。日本では筋注型が一般的。経口型は特定の医療機関でのみ取扱いで、抗菌薬との同時服用は避ける必要があります。


日本脳炎ワクチン

シンガポール市街地では発生リスクが極めて低いですが、郊外・マングローブ地帯・農村エリアでの長期滞在予定者には検討を推奨します。

使用ワクチン

  • ジェスプリックス®(チバイガイギー製、不活化): 細胞培養由来
  • ダーバックス®(グラクソ・スミスクライン製): 同上

接種スケジュール

  • 初回:0・7日で2回、その後1年後に追加接種
  • 追加接種:以降5年ごと

費用目安

  • 1回:4,500〜6,500円
  • 初回シリーズ(3回):13,500〜19,500円

MMR(麻しん・風疹・おたふくかぜ)ワクチン

1966年以降に生まれた方で、2回の定期接種歴が不明な場合、渡航前に確認・補充接種が必要です。

接種歴の確認方法

  • 母子手帳で確認(最も確実)
  • 接種票や予防接種記録票
  • 不明な場合:医師の判断で補充接種

費用目安

  • 1回:9,000〜12,000円

薬剤師メモ
MMRワクチンは生ワクチンのため、妊娠中の接種は禁止です。妊婦または妊娠予定の方で接種歴不明の場合は、妊娠前に完了させてください。出産予定日の4週間以内の接種は避けます。


水痘(みずぼうそう)ワクチン

シンガポールはヒトヘルペスウイルス4型(VZV)の流行地です。既感染や接種歴が不明な方は接種を検討してください。

接種スケジュール

  • 2回接種(4〜8週間間隔)が標準
  • 成人で既感染の場合は不要

費用目安

  • 1回:6,000〜8,000円

状況別の接種スケジュール例

パターン1:短期出張(1週間程度、市街地滞在)

接種時期 ワクチン 回数 備考
渡航2ヶ月前 A型肝炎 1回目 初回接種者のみ
渡航1ヶ月前 A型肝炎 2回目(急速スケジュール)
渡航4週間以上前に完了 MMR・水痘 補充接種 接種歴不明者のみ

費用目安:15,000〜25,000円


パターン2:中期滞在(1〜3ヶ月、郊外活動あり)

接種時期 ワクチン 回数 備考
渡航3〜4ヶ月前 A型肝炎 1回目
渡航2〜3ヶ月前 B型肝炎 1回目
渡航2ヶ月前 A型肝炎 2回目
渡航1〜2ヶ月前 B型肝炎 2回目
渡航4週間以上前 腸チフス・日本脳炎 初回 必要に応じて
渡航4週間以上前 MMR・水痘 補充接種 接種歴不明者

費用目安:35,000〜55,000円


パターン3:長期滞在(6ヶ月以上、定住予定)

接種時期 ワクチン 回数 備考
6ヶ月前 A型肝炎 1回目
5ヶ月前 B型肝炎 1回目
4ヶ月前 A型肝炎 2回目 / 腸チフス 単回
3ヶ月前 B型肝炎 2回目 / 日本脳炎 初回(2回)
2ヶ月前 日本脳炎 2回目 / B型肝炎 3回目(6ヶ月時点で完了)
4週間以上前 MMR・水痘・その他補充 接種歴確認後

費用目安:50,000〜80,000円

薬剤師メモ
B型肝炎の3回目は通常6ヶ月後ですが、渡航スケジュールの都合上、出発前に2回目を完了させ、3回目は現地または帰国後に補完することも可能です。医師と相談してください。


予防接種の重要な注意事項

ワクチン接種の間隔ルール

生ワクチン(MMR、水痘など)と不活化ワクチン(A型肝炎、B型肝炎など)の接種間隔:

  • 生ワクチン → 生ワクチン:27日以上の間隔を空ける
  • 生ワクチン → 不活化ワクチン:即日接種可能
  • 不活化ワクチン → 不活化ワクチン:即日接種可能
  • 不活化ワクチン → 生ワクチン:制限なし

妊婦・授乳婦の接種

ワクチン種別 妊婦 授乳婦
生ワクチン(MMR・水痘) ❌ 禁止 ✅ 可能
不活化ワクチン(A型肝炎・B型肝炎・腸チフス・日本脳炎) ⚠️ 相談推奨※ ✅ 可能

※妊娠初期(特に第1三半期)の接種は一般的に避け、出産予定日の4週間以内の接種は控えます。利益と危険性を医師と相談してください。


アレルギー歴がある場合

  • 鶏卵アレルギー:日本脳炎ワクチンは鶏卵培養のため、慎重に。ただし通常は安全。医師に事前報告が必須。
  • ゼラチンアレルギー:MMRワクチンに含有。医師の判断必要。
  • 抗生物質アレルギー:大多数のワクチンに微量含有。重篤なアレルギー既往がある場合は医師に相談。

予防接種受診のポイント

トラベルクリニックの活用

推奨機関

  • 国立感染症研究所

免責事項:本記事は渡航者向けの医薬品情報提供を目的とした薬剤師監修コンテンツです。 診断・治療に関する判断は医師の診察を受けた上で行ってください。 最新の規制・感染症情報は外務省・厚生労働省・現地大使館の公式情報を必ずご確認ください。

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